ワークプレイスは、単なる「箱」ではない。そこには、人の想いが交差し、組織の未来が形づくられていくプロセスが宿っている。
そしていま、竹内氏が見据えるのは、 「使われ続ける空間」と「データで再定義されるワークプレイス」という新たな可能性だ。
個の成長を追い求めた若手時代から、組織を育てる立場へ。
誠実な現場提案から、業界構造そのものを問い直す視点へ。
47内装というフィールドで歩んできた軌跡は、ワークプレイスを起点にゆたかな未来を構想する挑戦へと広がっている。
1章 違和感から始まったキャリア
1-1. 教室から社会へ、悩んだ末に選んだ原点
竹内氏の原点は、幼少期の家庭環境にある。父はグラフィックの仕事に携わり、その中でも家具を取り扱うことが多かったという。
「自宅の本棚には、家具のカタログが並んでいました。休日には家具屋に連れて行ってもらい、家具制作における製作者の方々の想いを聞くのが好きでした」
インテリアに触れることが多かった幼少期だったが、大学時代は体育教師を志していた。しかし、教育実習や職業体験などを経て、教職の道を最初に選ぶことにどこか違和感が残った。
「学校という空間は、社会から見ると少し閉鎖的に感じたんです。まずは広く社会に関わる経験を積み、その後教員への興味が再燃した時に、改めて教職を選択すれば良いという結論に至りました」
悩んだ末の決断。それは、幼少期から身近にあった「インテリア」の世界に、もう一度向き合う選択でもあった。
1-2. チャンスは、自ら掴みにいく
新卒で入社したのは大手インテリア販売会社。約8年にわたり、セールス、カスタマーサポート、ECサイトの運営など、多岐にわたる業務を経験した。
「新規事業の募集が始まると、真っ先に手を挙げて応募していました。自分自身の成長を追い求めて、目の前のチャンスは常に掴みにいっていました」
お世辞にも花形とは言い難いポジションであっても、とにかく経験値を最優先に考えていた。その裏には、研修時代に講師から言われたことが原動力に繋がっていた。
「新卒の時に言われた言葉は、今も心に残っています。『社会人からは、お客様に価値を提供し、お客様満足度を高めることができた対価としてお金を貰うことができる』という内容なのですが、まさに今の自分の教育方針にも繋がっています」
お客様のために、提供できる価値を最大化していく。それは今も変わることなく持ち続けている大切なスタンスである。
2章 47内装との出会いと新たな挑戦
2-1. 効率よりも、納得を選んだ3年間
個人の成長を追い求めていた竹内氏。しかし、新卒で入社したのは大手企業だったこともあり、自身の成長が会社全体の成長にどのように結びついているのかを実感することは難しかったという。
「手触り感を持ちながら、自分の成長がそのまま会社の成長につながるような環境に身を置きたいと思うようになったんです。転職活動では、ベンチャー規模の会社に絞って見ていました」
一社一社と丁寧に向き合う姿勢は、効率的とは言えないかもしれない。それでも妥協することなく選択肢を見極め続け、47内装と出会うまでに約3年の歳月をかけた。
「隅中(取締役)の話を聞いたとき、純粋に『この人と一緒に仕事がしたい』と思ったんです。言葉だけではなく、本気で会社を良くしていこうとする熱量が伝わってきました」
内装業界には“ブラック”というイメージがつきまとうこともある。それでも、不安よりも同じ方向を向いて挑戦できる期待感のほうが大きかった。そうして、当時まだ10名ほどだった47内装で、新たなキャリアを歩む決断を下した。
2-2. 「私」から「組織」へ、成長の主語の変遷
1社目で培った経験を武器に、まずは営業コンサルとしてクライアントと向き合う日々が続いた。しかし当時の組織は、営業と設計のみ。案件が増えるにつれ、現場を統括する機能の必要性が次第に高まっていった。
「会社として新たに現場管理部門を立ち上げることになり、その役割を任されました。とにかく業務改善を進めないと、現場が回らない状況だったんです」
現場管理の経験はなかったが、自ら学びながら、組織もつくる。属人化していたプロセスを仕組みへと落とし込み、現場管理部門の立ち上げを実現した。体制が整った現在は営業コンサル部門へ戻り、部長として俯瞰的な立場から組織を動かしている。
「今はプロジェクトにおけるメンバーのアサインや業務改善、仕組み化などに取り組んでいます。組織の立ち上げ経験を経たからこそ、表に出ない仕事の重要性も痛感しています」
個の成長を求めて歩み始めたキャリアは、いつしか“組織を育てる側”へと広がった。その軌跡は、47内装の成長と重なりながら、いまや中核を担う存在へとつながっている。
3章 成長を生むリーダーの思考
3-1. 守りと攻めで“For Customer”の実現へ
竹内氏が一貫して大切にしていることは、徹底的に誠実であることだ。この姿勢は、47グループが掲げるバリューである”For Customer”とも深く重なり合う。
「内装の世界には、至るところにリスクが潜んでいます。実際に現場へ足を運び、直接確認しなければ分からないことが本当に多いんです。だからこそ、どんなに些細なことでもきちんとお伝えする。それが、後々のトラブルを未然に防ぐことにつながります」
一方で、リスク管理だけでは、プロジェクトを前に進めることはできない。お客様の理想を叶えるための提案をしていくことも必要である。
「提案をする際には、必ず『なぜこの提案なのか』という理由を添えるようにしています。デザインが良ければ決まるという単純な世界ではありません。だからこそ、この空間がどのようにお客様の課題解決につながるのかを、丁寧にお伝えすることを大切にしています」
だからこそ、竹内氏の提案は、単なる「空間づくり」にとどまらず、お客様の未来をともに構想する伴走のかたちへと昇華していくのである。
3-2. 自己開示から始まるチームづくり
部長として組織を束ねる竹内氏。彼が大切にしているのは、メンバーとの関係性の質だ。
「プライベートの時間もメンバーとゴルフをしたり、子供と遊んでもらったり、一緒に過ごす時間を大切にしています。コミュニケーションが要の仕事だからこそ、まずは自己開示から始めることを心がけています」
また近年は、”どうすればスペシャリストが活躍できる場をつくれるか”という視点を強く持つようになった。仕組み化を通じて個の力を最大化することに、やりがいを見出す。
「『知っていることを増やしたい』という成長欲求は今でもありますが、組織が大きくなってきた今、組織としてのパフォーマンスを最大化する為の土台をつくる方が、自分の役割には合っていると思います」
スペシャリスト志向のメンバーが多い47内装において、現場感と俯瞰の視点を併せ持つ竹内氏の存在は、組織のバランスを整える重要な軸となっている。
3-3. 問いが存在意義をつくる
竹内氏が大切にしているのは、”なぜ?”と問い続ける姿勢だ。提案の背景を自分たちの言葉で語れなければ、お客様の納得にはつながらない。だからこそ、メンバーがどのような思考プロセスを経てその結論に至ったのかを、丁寧に掘り下げることを欠かさない。
「綺麗に並べるだけがデザインじゃないんです。その空間がどう使われるのか、お客様がどう喜んでくださるのか。そこまで考えてこそ、私たちの存在意義が生まれると思います」
しかし、この姿勢は最初から備わっていたものではない。自身の失敗を通して、その重要性に気づいたという。
「お客様からの質問に対して、根拠を持って回答できないことがあるんです。自分よがりで突っ走っているときは、大体うまくいっていないときだと思います」
”なぜ?”という問いは、ときに相手にプレッシャーを与えることもあるという。だが本来それは、相手を追い詰めるための言葉ではない。問いを重ね、背景を共有し、ともに意味を紡いでいく。そのプロセスにこそ、提案の本質が宿るのである。
3-4. トラブルを成長に変える思考
この業界は、不測の事態が起こることも珍しくはない。竹内氏も同様にトラブルを経験してきているが、1つのマインドで乗り越えているという。
「起きたことは変えることができないんです。だから、まず考えるべきことはなぜトラブルが発生したか、その事実を捉える。そこから『どうしていくのが良いか?』を考えることで乗り越えています」
そして、それは組織においても同様のことが言える。組織長として従事する中では、メンバーの退職という場面にも向き合ってきた。
「ポジティブな退職であれば、素直に応援したい気持ちが強いです。でも残念ながら、ネガティブな気持ちを抱えて退職するメンバーもいます。そんな時には、『もっとできたことはないかな』と必ず振返るようにしています」
問いを自らに向け続けることこそが、トラブルや別れを単なる出来事で終わらせず、組織を次の成長へと導く原動力になると、竹内氏は考えている。
4章 空間の先に、社会を描く
4-1. ワークプレイスから日本を変える
47グループでは、”ワークプレイスで、ゆたかな未来を”というミッションを掲げている。かつてはどこか夢物語のようにも感じられたその言葉が、今では少しずつ手触りのある目標へと変わってきているという。
「大きなテーマですが、47グループは仲介・内装・家具というプロセスを一気通貫で担うことができます。だからこそ、一部分だけでなく、ワークプレイス全体を通してお客様の理想を一緒に描き、かたちにしていくことができるんです」
ワークプレイスを起点に、日本の労働生産性を高めることができたとしたら。その積み重ねが、やがて社会全体の成長へとつながっていくかもしれない。そう捉えた瞬間、オフィスという“箱”は単なる空間ではなく、無限の可能性を秘めた場所へと姿を変える。
「内装という枠の中だけで完結してしまえば、見える未来も限定的になってしまうと思うんです。ビジョンが大きいからこそ、可能性の広がりにワクワクしますし、自分たちならそこに近づけるんじゃないか、という実感も少しずつ強くなっています」
理想を掲げるだけではなく、その実現に向けた一歩を着実に積み重ねていく。その姿勢こそが、“ゆたかな未来”を確かな現実へと変えていく原動力なのかもしれない。
4-2. データが拓く内装業界の可能性
現場に立ち続ける中で、竹内氏の中に芽生えたもう一つのテーマがある。それは、”データ”という視点からワークプレイスを捉え直すことだ。
「お客様へサービスを提供する中で、いつも“これがあったらいいのに”と思う瞬間があるんです。データをもっと有効活用できれば、提供できる価値はさらに広がっていくはずだと感じています」
オフィス仲介の現場では、空室情報が十分に開示されず、問い合わせや確認に時間を要するケースが少なくない。その結果、情報の非対称性が生まれ、機会損失につながっている。また、その影響はオフィス内装の現場にも及ぶ。図面データが整備されていないため、物件ごとに寸法を測り直すことが常態化しているのが実情だ。
「もし正確な図面データが蓄積・共有されていれば、物件契約から内装構築、家具手配といった一連のフローはよりスムーズに進みます。オーナーとテナント双方にとってメリットが生まれ、業界全体が“ウィン・ウィン”になる構造を描けるはずなんです」
一つの空間をつくり上げるまでには、膨大なプロセスとデータが存在している。構造が複雑であるがゆえに課題も多いが、その仕組みに手を入れることができれば、業界全体を前進させる大きなチャンスへと転換できる可能性を秘めている。
4-3. 完成は、ゴールではない
竹内氏が、お客様への提案を通して大切にしているのは、“長く使われ続ける空間”であるかどうかだ。移転や竣工の瞬間は一つのゴールのように見える。しかし、本当の価値はその後の時間の中でこそ問われるという。
「もちろん会社は成長しますし、組織や働き方の変化に合わせてオフィスをアップデートしていくことは必要だと思っています。ただ、完成してすぐにメンテナンスや改修が必要になるような状態は、提案として十分ではなかったのではないか、とも感じています。最初の段階でしっかりと将来の変化まで想定し、できるだけ長く使い続けられる状態をつくること。それが提案の質だと思っています」
どれほどデザイン性に優れていても、使いにくければ次第に離れられてしまう。重要なのは“かっこよさ”そのものではなく、働く人の満足度が持続することだ。
「例えばブランド家具は分かりやすいですよね。100年、200年と使われ続けているものがあります。ただ美しいだけではなく、生活に馴染み、使う人の満足度が高いからこそ、後世まで残っているのだと思います」
オフィスもまた同様に、日々使われるための場所である。見た目の魅力はあくまで+α。本質を捉えた空間提案こそが、結果としてクライアントの長期的な満足へとつながっていく。
編集後記
今回の取材を通して強く感じたのは、竹内氏の視点が一貫して「時間軸」に向いていることだった。完成の瞬間ではなく、その後も使われ続けているかどうか。今の成功ではなく、その先の業界や社会への波及。
空間づくりという仕事は、どうしても“完成写真”に価値が集まりがちだ。しかし竹内氏は、その写真の外側にある日常を見つめている。
「なぜ?」と問い続ける姿勢も、「使われ続ける空間」を目指す視点も、そしてデータで業界課題を解こうとする構想も、すべては働く人の未来を少しでも前に進めたいという思いに通じている。
ワークプレイスは、単なる箱ではない。
人と組織の可能性を広げる“装置”である。
その未来を、理想論で終わらせないために。
47内装も含め、47グループの挑戦は、着実に新たなフェーズへと進み始めている。
文・Focus i DESIGN 編集部


